Animal Emergency Preparedness(動物の緊急事態への備え)という概念があります。
緊急事態には様々な形態が含まれます。地震・洪水・大雨、程度・季節・環境などによって、必要な対応策は変化します。
適切に対応するためには、特別なトレーニングが必要です。残念ながら、日本において馬のこのような事態に対する専門家はいないと思われます。
John Madigan先生
2018年に、新生児疾患に講演会のために来日されたことのある先生です。カリフォルニア大学デービス校(UCDavis)の名誉教授で、獣医内科学と動物福祉学の専門家です。
1990年に、獣医緊急対応チーム(Veterinary Emergency Response Team)や、カリフォルニア動物救急対応委員会(CARES:California Animal Emergency Response)を創設しました。
Madigan先生は、馬を含む災害・緊急対応の専門家であり、先生がデザインされたスリングやリフトは全世界に広まっています。近年は、さらに簡素化されたループ・レスキューシステムを開発されました。
中心点からぶら下がる金属フレームから吊り下げて使います。腹部、胸部、臀部にかかる力を軽減する四肢サポートを付けることで、よりよい体重分散が可能になります。
寝たきり状態などになって圧迫されると、皮膚の血流が滞ることで皮膚が壊死します。これを褥瘡(じょくそう:床ずれ)と呼びますが、馬を吊り下げた際にバランスが悪かったり、長期間同じ部位に圧迫が加わることで、褥瘡ができて管理できなくなってしまいがちです。
Anderson Slingは、褥瘡の発生が少なく長期的なサポートに向いています。また、頭部と頚部を支えるパーツもあり、頭を支えるのが困難な馬やヘリコプターでの搬送などで役に立ちます。
ただし、装着には時間も技術も必要です。
Large Animal Liftは、Anderson Slingのように長期的に吊り上げることを目的としておらず、装着のしやすさを追求されてデザインされました。 価格は $2,695
どちらも、骨折が疑われる馬、骨折している馬、骨折内固定手術をした馬などが、麻酔から立ち上がる際に使うことが可能です。
こちらは、Simplified Loops System。少ないパーツで、現場で使いやすいように考案された一番新しいシステムです。値段も格段にお安くなっています。
Madigan先生は、獣医学部向けに獣医学災害・緊急対応カリキュラムの作成などにも携わり、その功績の偉大さは、アメリカ獣医師協会動物福祉賞、馬術協会功労賞など、数多くの受賞歴が示しています。
トレーニング
これらの器具は素晴らしいものですが、器具の使い方だけではなく、馬の精神状態をコントロールしてあげることが最も重要とされています。
どんなに素晴らしい器具でも、慣れた方法と、慣れたスタッフが必要なことは変わりません。
サンタバーバラ動物愛護協会のティム・コリンズ氏は、長年馬の事故に対応する人のために、緊急事態への備えと技術的救助訓練に関するセミナーやワークショップを開催しています。
彼は、最初に現場に到着した人は、適切な現場の安全を確立したのちに、救助方法の作戦を立てる前に
①獣医師に連絡すること ②馬の精神をコントロールすること が大切だと述べています。
暴れようとする馬を抑える必要のあることもあります。耳の先端を優しくこすったり、上顎の歯肉をマッサージしたり、鼻翼の内側をこすったりすることで、なだめる方法もあります。そして、安心させるように普通の会話調で話しかけます。
是非、いざという時のために、各地の県馬連や、団体で購入しておいてはいかがでしょうか。
必要になった時に急いで購入することはできないのですから…
Mahalo