北海道は分娩シーズン真っただ中。シーズン前半に生まれた仔馬たちはすでに200kg近くまで成長しています。人間の子供もそうですが、大きくなると嬉しいですね。ただ、急激な成長はいろんな弊害をもたらします。
近年、競走馬のみならず乗馬の生産が北海道以外の地域でも増えてきています。北海道の獣医師や装蹄師にはおなじみの疾患ですが、知っておいて早急に対応しないと大変なことになる病気:クラブフット。

クラブフット(Club foot/feet)とは?
病名に Foot があるように、肢の疾患です。見た目には蹄の形状が一番影響が出るために、蹄の問題に思われますが多くの場合は『深屈腱(深指屈筋腱)』が重要な病因となる疾患です。

程度はありますが、蹄が直立し蹄踵が長いのが特徴です。蹄尖側と蹄踵側で幅の異なる蹄輪が形成されます。一般的に前肢に発症することが多く、先天性では両前に発症することもありますが、後天性の場合の多くは片側性です。
程度(グレード分類) Dr.Redden
クラブフットはその程度によって、Gradeがあり、治療法策定や予後判定のための指標となります。



原因
先天性の場合と後天性の場合があります。
後天性は仔馬が生後2~8カ月例の時に発症しますが、多くの症例は12週齢までに発症します。
後天性に発症する場合、腱の成長よりも骨の成長が早いことが大きな要因となります。
乳量の多い母馬・遺伝的に急成長しやすい血統や品種・高たんぱくの食餌/過剰エネルギーなどが、急成長をひきおこしてしまいます。
後天性のものには別の要因で極めて急速に(3~5日の期間で)発症・悪化するタイプもあります。
蹄に起因する痛み、過度な運動、そのほかの成長器疾患(骨端炎など)や外傷による痛みによって引き起こされるタイプです。
蹄・繋・球節・腕節・肘・肩… 肢のどこかに痛みがあると、馬は荷重を避けようとします。
そうすると、こわばって筋肉が緊張し続けることで深指屈筋腱が固まってしまい、各関節が拘縮(こうしゅく:固くなって動きが制限される状態)します。
荷重を嫌うことは、蹄踵の狭窄を招き、蹄叉の退縮を伴います。そうすると、蹄叉や跖枕(せきちん)は、蹄にかかるストレスを軽減させる働きがあります。病態がすすみ、蹄底全体で負重できない状態が悪化すると、蹄にかかるストレスは直接に蹄壁や蹄骨へと伝わってしまうため、跛行につながります。
残念ながら、拘縮して一定期間そのままの状態でいると、痛みが消失しても元に戻ることはありません。
治療方法
仔馬がゆっくりと成長できるように、高デンプン・高糖分の餌は与えずに、アルファルファなどの高タンパク牧草でなくチモシーなどの牧草を与えることは大切なことです。
内科療法 と 装蹄療法 と 外科手術 の3つの方法でアプローチします。
先天性の場合 : 酷い場合は自力で起立することができません。内科治療が必要になることがあります。
①オキシテトラサイクリンの静脈内投与 ②鎮痛剤の投与 ③ギプスや厚めのバンテージをして腱を緩める
これらの治療と合わせて、装蹄療法を行います。

腱を弛緩させる効果のあるオキシテトラシクリンは1日おきで2~3回行うことがあります。この際の容量は、通常に抗生物質として使用するよりも多い量を用いるので、腎臓に負担をかけてしまいます。血液検査が推奨されます。
バンテージにも、腱や軟部組織を弛緩させる効果があります。仔馬の皮膚は弱いので、毎日巻替えが必要です。
後天性の場合 :
3カ月例から3歳までに発症する後天性のCluFeetの馬の管理は、特に栄養のバランスを整えることが大切です。授乳中の場合、必要に応じて離乳も考慮します。
運動も大切です。可能な限り腱を伸ばして運動する必要があります。そのためには、多くの場合で鎮痛剤が必要です。
手術
内科療法や装蹄療法に反応しない場合、重篤な場合に行います。 蹄骨を引っ張っている深指屈筋腱をひっぱっている支持靭帯を切断します。
この靭帯を切断することで、深指屈筋腱が伸びやすくなるので蹄骨にかかる張力を減らすことができます。支持靭帯を切断しても競走馬として走ることは可能です。
ただし、このような馬は正常な蹄を持つ馬よりも、蹄の痛みなどを発症するリスクが高いかもしれません。

支持靭帯を切断しても症状が改善しない場合、深指屈筋腱切断術の選択もあります。ただし、深屈腱切断術をすると競走馬は不可能になります。術後に改善がみられれば、乗馬は可能です。
クラブフットに対するすべての治療は、6カ月例未満に行えると治療に対する反応が良いと言われています。あまりに酷いクラブフットでは、予後はあまりよくありません。
持続する関節への異常な荷重などによって、蹄関節の痛みなどが消えなくなってしまう可能性があります。
Mahalo