獣医療

高齢馬の緊急開腹手術

今日は敬老の日ですね。みなさんは何歳からが高齢馬だと思いますか?

高齢馬の定義はありませんが、20歳以上を高齢馬とよんでも誰も反対はしないでしょう。

そんな おじいちゃん馬 おばあちゃん馬 達が疝痛になったとき。。。。

疝痛の治療に、外科手術が必要と判断された際、経済的な理由や術後の寿命を考慮して、手術しないという選択がなされることも少なくありません。

一方で、高齢ですが急性腹症に対して緊急開腹手術を行った馬たちもいます。

今回は、20歳を超えて開腹手術を実施した6頭の馬たちの紹介を使用と思います。

最高齢は28歳の半血種で、

有茎脂肪腫による小腸絞扼でした。

※茎のある腫瘤(脂肪腫:かたまり)が、腸間膜にできて、小腸がその茎に強くからまってしまって、ダメージを受ける病態。

20歳のサラブレッド乗馬は、Renosplenic Entrapment(腎臓と脾臓の間に結腸がはまり込む病気)で手術をして、10日後に小腸の疾患で2度目の開腹手術を行いました。

20歳のポニーもいました。心臓病を患っている馬もいました(術前検査で判明)。

麻酔時間 107 ~ 247 分 と 長い手術になりました。

やはり高齢だと、麻酔の危険性や、覚醒時の危険性が一番気になるところですが、幸いどの馬たちも

スリング を使うなどして、無事に麻酔から覚醒することができました。

別の馬の動画ですが… こんな感じで起立を補助してあげます。

さて、手術が無事に終わって この馬たちはどの位長生きできたのでしょうか。

残念ながら術後12日でなくなってしまった馬もいました。

ですが、馬術大会に復帰できた馬や、5年以上も健康に過ごしてくれた馬もいました。

高齢の馬では、慢性肝炎・心臓病・代謝性疾患などをもっている馬もたくさんいます。若い馬に比べて、相対的に難しいのは現実ですが、このような結果もあります。

術後生存期間については、人それぞれ思うことはあると思います。ですが、少なくともこの馬たちは、オーナーの理解のもとに、手術をうけて生きながらえることができました。

このような技術を維持し、常にオーナーさんのご希望に沿える治療を提案できるようにしておきたいものです。

今回は、2019年 ウマ科学会 にて 当院の 〇〇先生が 発表したスライドを拝借しました。ありがとう