軽い疝痛を繰り返す などの症状はありませんか? もしかしたら、腸石症かもしれません。
- バナミンでおちつく程度の疝痛を繰り返したりしてませんか?
- ボロに小石が混ざっていませんか?
- 水質調査していますか?
- アルファルファ乾草与えすぎていませんか?
腸石症とは
日本では、あまり発生の多くない疾患ですが、カリフォルニア州やフロリダ州では、疝痛の一般的な原因としてあげられる疾患です。読んで字のごとく、腸の中に石ができてしまいます。
一般には馬の大腸の 右背側結腸 と呼ばれる場所でできます。大きさは様々ですが、大きいものは腸管内で詰まってしまい、疝痛を引き起こします。
開腹手術で摘出した 腸石
丸いもの や ピラミッド型 などがあります。
写真のようなピラミッド型は、腸管内で複数の腸石がこすれ合った結果、このような形になると言われています。
症状
腸石のできる場所によって様々です。大腸の中にとどまっていて、閉塞などをおこさなければ パフォーマンスの低下、間歇的(かんけつてき:一定の時間を置いて起こったりやんだりする)な軽度な疝痛 など軽い症状で済むこともあります。
大腸よりも後ろ(肛門より)にある 小結腸(しょうけっちょう) は、大腸よりも細い構造をしています。ですから、小結腸まで石が流れると、石が詰まって しまうことがあります。 そうすると、腸管内容が送られない、あるいは、石によって腸管に過度な圧がかかることで腸が局所的に壊死してしまうこともあります。そのような場合には、急性の重度の疝痛 を呈することになります。
診断と治療
石が大腸にある場合は、デジタルレントゲンで約85%の診断が可能との報告があります。ですが、小結腸まで流れてしまうと、レントゲン撮影が難しくなるので、診断率は60%まで低下してしまいます。ただし、小結腸まで流れて症状をだすと、手術が必要な程の痛みをみせることがおおいため、開腹手術をして、その途中で石が発見されることが多いようです。直腸検査で分かることは稀です。
小さなものであれば、自然とボロと一緒に出てくることもありますが、大きいものや閉塞したものに関しては、開腹手術が必要になります。
原因は? どんな馬がなりやすいのか
病態の明確な原因はわかっていません。ただ、遺伝・運動・飼料などが関わっていると思われています。
好発品種 : アラブ・アラブ系・モルガン・アメリカンサドルブレッド・ロバ・ミニチュアホース
同じ品種、同じ環境、同じ飼養方法をしていても、罹患する馬としない馬がいます。ただし、あなたの馬の兄弟や同厩の馬に発症がみられた場合は、注意して管理した方がよいでしょう。
~ 石が体内でできる過程 ~
何らかの小さな物体を摂取したときから始まります。それは、小石・砂利・硬くなった穀物の殻・ヒモなどが、ミネラル沈着する核(Nidus:ナイダス)となってしまいます。
犬や猫の尿石症で ストルバイト って聞いたことありますか? 腸管内で適切な条件がそろうと、これと同ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)と呼ばれる鉱物が、異物の周りで結晶化して石になってしまうのです。
リスクファクター
- pH : 右背側結腸のpHが高いこと
- 大腸のミネラル濃度が高いこと
- 腸管運動が減少すること
① 右背側結腸のpHが高いこと
アルファルファのように、高たんぱくでミネラル(特にマグネシウムやリン)を多く含む飼料の長期にわたる過度な給餌は、右背側結腸をアルカリ性に傾けてしまいます。ただし、もともとpHの高い馬がいることもわかっており、これらは遺伝によるものと考えられています。
右背側結腸内のpHが高くなることで、ミネラルの結晶化が促進されるとされています。
② 大腸のミネラル濃度が高いこと
液体中に溶解したミネラルが、アルカリ性の環境下で過飽和状態となると、結晶化しやすくなります。飲料水と腸石の関係は明確にはなっていませんが、何らかの関係があるかもしれません。例えば、餌と水の組み合わせが付加的な効果をもたらしているのかもしれません。
水には、マグネシウム・カルシウムなどの硬度成分が含まれており、硬度が 120mg/ℓ 未満を軟水、 120mg/ℓ以上を硬水と呼びます。
(ちなみにエビアンは304㎎/ℓ)
井戸水を使われている方は一度、水質調査をしても良いかもしれません。水の硬度は、地域や井戸の深さによっても異なります。10m以上掘ると、硬水になる確率が上がります。
日本は、国土が狭いわりに高低差が激しく、地下水も川の水も急な流れのところが多く、地層のミネラルが溶け出す時間が短いために軟水が多い傾向にあります。水道水でも地域によって大きく違いがあります。ご自身の使われている水道局のHPなどで調べるか、聞いてみてください。
千葉県・沖縄県・熊本県・などでは硬度の高い水が出る場所が知られています。その他の県でも、県単位では、まったく異なる水質になることも珍しくないため、実際に使用している水を調べることが、硬度を知る唯一の方法です。もし硬度の高い水をご使用の際は、硬度を下げる 軟水器 というものがあります。
③ 腸管運動が減少すること
食物の腸管内滞留時間が長すぎると、結晶形成の時間も長くなります。屋外での飼養時間が50%未満の環境では、発症がおおくなると言われています。
予防
年に2~3回の軽い疝痛を起こすなどの病歴があって、ボロの中に小石が1つでもあれば、本症の可能性は高まります。また、遺伝的な要因が気になる馬などに対しては、どう予防したらよいでしょう。手術になる前に、対処できることは
- 飼料から アルファルファ を抜く
- 放牧時間をできるだけ長くする
- 干し草を直接床の上に置くのではなく、餌桶に入れて与える 床において一緒に砂や砂利を摂取しないように
- サイリウムを餌に混ぜる
- 水質をチェックする
- ふすま は避ける
- リンゴ酢を与える
酢に関しては、エビデンスがあるわけではありません。ただ、大腸のpHを下げてくれることを期待して与えます。効果はわかりませんが、悪いことは起きないようです。
さいごに
いかがでしたでしょうか? ご自身の馬が、軽い疝痛を繰り返すなどの病歴をお持ちの際は、
ボロ に石が混ざっていないか 要チェック してみてください。
獣医師にも相談してみてください。
長い記事、最後までご愛読いただき Mahalo~