担当の片川さんから、『安楽死の具体的な手法・薬品』について聞かれたときに、。。。はて、こんな内容は誰か興味があるのだろうか?と思いました。
そして、それをお伝えすることが何か意味のあることに繋がるのだろうか?と思いました。ですが、その道のプロからの要望なので、私の想像し得ない『知りたい人』がいるのかもしれないと考えて、詳しくお答えしました。
今回はその補足です。
Flight Animals
大学生のころだったか、阿蘇のグリーンバレー乗馬クラブでエンデュランスの大会がありました。大会のお手伝いをして、夜は増井光子先生の講義を拝聴しました。
増井光子先生は、あまりに多くの経歴がありすぎて紹介が難しいですが、上野動物園の園長や麻布大学の客員教授を務められた獣医師です。2006年には、世界馬術大会のエンデュランス日本代表にも選ばれた方です。
頭が悪いので何を話していただいたか、あまり覚えていませんが、その時に『馬はFlight Animalです』と言われたことは覚えています。
オーストリア・ザルツブルグのミラベル庭園内のペガサスの泉
『Flight;フライト』には、【名】1.飛ぶこと 2.航空便 3.(鳥などの)群れ 4.逃亡・逃走 などの意味があります。
『Flight Animals』とは、危険の徴候を察知するとすぐに逃げ出す生き物のことを意味します。。
馬は捕食者などの危険を察知すると、その優れた嗅覚・視野角(350度)・聴覚(大きな耳を動かして)を活用して、危険をいち早く察知して逃避します。
常に神経を張り巡らせ、いつでも逃げられるようにするために立って寝るようになったともいわれています。
『死』への理解
そんな性格の彼らが、自らの命の危機に気づかないわけがありません。
記事中の『死』の概念を理解しているかどうかわからないというのは、動物に対し過度な感情移入をせずに冷静に判断するための職業的なトレーニングから導き出された表現でした。
また、多くの方の目に触れる記事中で偏った個人的感覚を文字にすべきでないと考えたからです。
私個人の感覚としては、馬によって異なると思っています。
安楽死される馬の多くは、死に瀕した状態、あるいは苦しんでいる状態です。
ですから、鎮静剤を投与すると落ち着くとともに、一時的に痛みも大幅に軽減されるため馬は楽になります。
『やっと痛みから解放された。楽になれる』と安どした表情にも見えますが、おそらくそれは鎮静剤の影響で表情が緩むので、見ている人間がそう感じるだけだと思います。裏返すと、それがなければおそらく彼らの中で『死 ≒ 苦痛のその先』に近い概念なのかもしれません。
その不安感を緩和してあげることは、獣医師の務めでしょう。
馬によって異なると述べた理由は別にありますが。。。
文字にすることができる内容ではありません。
ただ、個人的経験からみると、馬によっては死を理解している馬も確実にいると思っています。
それをわかってあげないと、彼らの尊厳を守ってあげられなくなります。
第三回
次回の内容は、『死』を選択する前の段階。治療について。
治療内容ではなく、治療の選択肢、予後の判定、経済的観点。など、現実的な内容に触れていきます。
いつも読んでくれてありがとう。
Mahalo