FLASH(Fast Localized Abdominal Sonography of Horses)
2011にベルギーのリエージュ大学から発表されたエコー検査法で、疝痛の緊急性・外科的治療の必要性の判断を迅速かつ簡便に行うために開発された馬の腹部エコー検査方法です。
- 腹部の7つの領域を中心に検査する
- 10分以内に検査終了できる
- 高い確率で、急性腹症の原因と思われる異常を拾うことができる
- 臨床医の特別なトレーニングを必要としない(簡便)
検査は簡易的ですが。。。内容は比較的濃いので前編と後編に分けます。
1:Splenorenal Window
左第17肋間と膁部で、背側2/3の高さの領域
- 正常な馬では脾臓の内側に左腎が描出される。
- この断面で左腎が正常な位置関係で描出されるのであれば、腎脾エントラップメント(NSE)は除外できる。
- 左腎が描出できない ☞ NSE , エントラップメントされていない結腸の左背方変位 を疑う
2:Gastric Window
左の第10肋間を中心に中間くらいの高さ (前後の肋間に動かす)
※ 肘と腰角を結んだ線が横隔膜の目安になります。肋間にプローブをあてて、横隔膜よりも やや背側(胸腔)の位置から腹側方向へスライドさせることがポイントです。
- 胃拡張の有無を確認できる ≒ 胃内容逆流試験の必要性を判断できる
- 胃内容の推察が可能
- 逆流試験の後に 胃 と 脾臓 の間に 拡張した小腸がみえたなら、胃脾エントラップメント を疑う
3:Ventral Window 腹壁の真下(正中)頭側パート と 尾側パート
尾側パート(鼠経付近)の検査は、蹴る馬もいるので注意しましょう。
- 腹水貯留の有無を確認する :消化管穿孔・浸出液・血液 エコー源性から予測 / 安全な穿刺部位の確認が可能
腹水のエコー源性は腹水の性状によって異なります。典型的なモヤモヤエコー像は、血液を表しますが、確定するためには穿刺が必要です。穿刺する際に腸管を損傷させないよう、穿刺部位を確認することができます。
- 尾側パートでは特に 拡張・壁の肥厚した小腸 の有無を確認する
小腸は、正常では 間歇的に拡張とコラプスを繰り返します。壁の厚さは3㎜以下で、常に動いています。 鎮静は小腸の運動性を低下させますが、一般的に拡張はさせません。 運動性が低下すると、内容物の沈殿像をみとめることもあります。
腸炎でも同様の所見がみられることがありますが、肥厚の程度は軽度から中等度で、広範であることが多いでしょう。これらの鑑別は、画像だけでなく臨床経過が大事になります。
- 結腸壁の肥厚 の有無を確認する
馬の急性腹症において、重度の結腸壁の肥厚がみられる場合は、ほぼ結腸捻転です。正常あるいは軽度の捻転であれば、腹側結腸と背側結腸を画像から見分けることが可能ですが、腸管内ガスによって膨らむと区別ができないこともよくあります。結腸壁の肥厚は、腸炎・リンパ腫・炎症性腸疾患(IBD)なども考慮しますが、臨床経過や症状から鑑別することになります。
すべて異なる症例の結腸捻転時の腹部エコー画像です。いずれも結腸壁の肥厚がわかります。
高エコーなコンテンツが内張してしているときは、砂かもしれません。消化管内の砂は、腹側に沈殿して、エコービームを乱反射させますので、診断には注意と経験が必要かもしれません。超音波の砂の検出感度は高いのですが、砂の量を評価する能力は低いので、量を確認するのにはレントゲンが良いかもしれません。
各画像や疾患については、少しずつ追加情報を発信していきます。