ナビキュラー症候群は、完治することが難しい疾患です。古典的に考えられていたトウ骨の変性を伴う病態は、レントゲンでその進行を確認することが可能ですが、その他にもナビキュラー症候群と呼ばれる病態になる原因は複数あることがわかっています。(また記事が長くなるので、詳細は別の機会に…)
馬の跛行の原因を特定するために、様々な方法がありますが、その一つに神経ブロックがあります。末梢神経に局所麻酔をすることによって、投与部位より遠位(肢先側)の痛みを一時的に感じなくすることで、痛みの発生部位をある程度特定することができます。
今日紹介する馬は、7歳の乗馬(輓交種) 642 Kgでした。初診日は、2020年の夏。長く続く両前肢の慢性跛行で、騎乗運動をできない状態でした。特に左前肢の跛行が顕著で、神経ブロックにより蹄の痛みが強いと思われました。
さまざまな検査結果と、臨床症状から、ナビキュラーを疑ったので ナビキュラーブロック を行いました。
ナビキュラーブロックは、トウ嚢とよばれる袋に局所麻酔を投与して、ナビキュラーの痛みを一時的に感じなくさせる診断方法です。
さて、診断がある程度ついたら今度は治療です。治療の選択肢はいくつかあります
①イクソプロリン塩酸塩 の 経口投与
②ビオホスホネート剤の
静脈内(or 筋肉内)投与
③蹄関節あるいはトウ嚢への 薬剤投与 ステロイド製剤・ヒアルロン酸・ポリアクリルアミドゲル(PAAG) など
④装蹄 : 主に Heel UP と 反回ポイントを蹄踵側へ移動させる
この後、ショックウェーブ、特殊装蹄、抗炎症剤、運動制限などをして徐々に歩様が改善されてきました。
一時はこのような 蹄鉄の周囲に布がついている シガフーズ を使用したりしました。
完治しない病態ということで、オーナー様も悩まれましたが、どうしても今回の大会に一緒に出たかった。その時その時の状態に合わせてレントゲンと装蹄を繰り返し、今週末の大会になんとか臨むことができました。今後は、休養にあてるとのことです。
本来は、MRIなどでナビキュラー症候群の原因を特定したいところですが、簡単にはできません。
獣医師だけではなおせません。 症状をみながら、オーナーと装蹄師と獣医師が協力して、良い結果が出たケースでした。