鶏に似たような後趾の使い方をする 鶏跛(けいは)。について

症状
並歩の際に、後肢を過剰にひきつける特徴的な歩様をみせます。
鶏跛の多くは、片方で発症しますが、両方の後肢でみられることもあります。並歩をしている間中、毎回肢を上げる際にそうなることも特徴で、速歩では軽減し、駆歩ではみられません。
痛みがある疾患ではありませんが、その程度は軽いものから重度なものまでさまざまです。
重度の鶏跛では、歩くたびに患肢の球節が腹部に毎回当たってしまう場合もあります。
鶏跛は他の後趾の神経筋疾患(Shivering / Fibrotic Myopathy )など鑑別する必要がありますが、これらは臨床症状から判断されます。

原因
原因がはっきりするものと、特発性のものとあります。
オーストラリア型と呼ばれる鶏跛は、両側性に起きることが多い鶏跛です。主に、オーストラリアやニュージーランドの夏の終わりや秋に複数頭が一度に発症します。
この時期は牧草の少なくなる時期で、セイヨウタンポポや、ウサギアオイ、ブタナなどを摂取することが発症要因と考えられています。放牧地関連型や、植物関連型とも呼ばれます。
病理学的には、浅・深腓骨神経、遠位脛骨神経など特定の長い末梢神経の軸索障害がみられます。
そして、その神経支配にある長趾伸筋、外側趾伸筋などに広範な筋繊維の萎縮と線維化を認めます。長趾伸筋には、神経原性萎縮に一致する2型繊維の減少が報告されています。

特発性の鶏跛は、原因不明の状態で突然発症しますが、飛節の前や外側を受傷した際に発症することもあります。
治療
オーストラリア型の症状は一時的であることが多く、放牧地を変えたりすれば治ります。
特発性は、稀に自然に治癒することもありますが、殆どはそのままは治りません。
古典的には、飛節の前を通過する長趾伸筋腱を切除する方法が報告されています。

術後1カ月は、20分の曳運動を1日2回続けます。
13頭の両側性の鶏跛を呈した馬に対して、この手術を行った報告があります。
Clinical diagnosis and results of surgical treatment of 13 casesof acquired bilateral stringhalt (1991–2003)
EQUINE VETERINARY JOURNALEquine vet. J.(2005) 37(2) 181-183
13頭中、6頭の馬が手術の直後から正常に歩けるようになりました。
13頭中、7頭は若干の改善がみられました。 そのうち5頭は、術後4-12日に正常な歩様になりました。
その他にも、
Quantification of surface EMG signals to monitor the effect of a Botox treatment in six healthy ponies and two horses with stringhalt: preliminary study
Equine Vet J . 2009 Mar;41(3):313-8.
人の美容外科でよく知られている ボトックス を注射した報告です。 ボトックスは、ボツリヌス菌の毒素(ボツリヌトキシン)から抽出された成分です。
人では、注射によって表情筋の収縮を抑えることで、シワを目立たなくする目的で使われます。
この研究では、注射された部位の筋肉の活動が低下させることで、治療につなげようとしました。
長趾伸筋、外側趾伸筋、外側広筋に分けて1頭あたり最大700単位注射しました。
投与された3カ月後まで、一定の効果(過屈曲の減少)がみられています。
症例数も少ないので、まだまだ臨床的研究が必要と思われます。
必ずしも治療が必要ではないですが、鶏跛でお悩みの際は獣医師に相談してみて下さい。
手術は立ったまま局所麻酔で行います。
出血など、見ても大丈夫な方はみてみてください。(年齢制限あり)
Mahalo