先日に大阪公立大学にて実施した 関西圏馬卒後研修事業2022 では、多くの先生方と交流することができてとても有意義な講習会となりました。
講習会の報告は近日中にするとして、参加された獣医師から評判の良かった、『疝痛時の腹部超音波検査』について、シリーズで記事にしようと思います。
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十二指腸の検査位置

壁厚 ≦ 3mm
見え方
つぶれた状態が正常で、良く動き流動的な内容物が運ばれるのがみえます。
収縮期の径は≦16.2±4mm
拡張期の径は≦33±6.6mm ですが、 その運動性には食べたものや絶食との関係性があります。
収縮回数は (回/分)
乾草 | 2.5±1.1 | 濃厚飼料 | 2.2±1.2 | 絶食 | 0.4±0.5 |
拡張回数は (回/分)
乾草 | 2.8±1.0 | 濃厚飼料 | 2.6±1.4 | 絶食 | 0.9±0.2 |




馬の右側から腹腔鏡を入れて十二指腸の動きを観察しています。超音波でみえる十二指腸の動きのイメージがよくわかるのではないでしょうか。
十二指腸の拡張について


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十二指腸の拡張をみたらすぐに、左側から 『胃』の超音波検査を行います。 胃破裂の可能性があるので、可及的速やかに胃内容逆流試験(経鼻カテーテル)を行う必要があります。
続いて、腹部のそのほかの部位で『小腸の拡張・小腸壁の肥厚』の有無を確認します。
そのような異常所見がみられた際は、手術適応となりますが、馬の外科医を悩ます病態が近位小腸炎です
逆流試験をした後の馬の反応が、これらを見分けるKEYになります。近位小腸炎の場合、逆流試験の後に比較的痛みが落ち着くことが多い傾向にあります。
一方で、空腸や回腸の機械的閉塞の場合は、痛みが続くことが多いでしょう。
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いずれにしても、決め手に欠ける場合は、血液検査や身体検査において全身状態を評価します。
状態がそれほど悪くなければ、絶食・絶水して、少なくとも2時間おきに超音波検査や胃内容逆流試験を行います。
腹部エコーで小腸の拡張像などが沢山見えなくても、経過を観察するうちに
①過度のReflux
②痛みの再発
③全身状態の悪化
などを認めた際は、開腹手術の適応と判断します。
近位小腸炎であったとしても、『機械的イレウスがないことを確認することに意義がある』ので、近位小腸炎が原因でも開腹手術をすることは適切と考えて良い との記載もあります。
近位小腸炎の原因は明らかではありませんが、サルモネラやクロストリジウムの関与が疑われれています。
二次診療所への 搬送のタイミング
腹部に沢山の小腸のイレウス像がみえらた、迷わず運びます。
搬送前には、十二指腸や胃の超音波検査を行い、極力胃内容逆流試験を行ってから搬送します。
決め手に欠ける、あるいは近位小腸炎を疑う場合は経過を観察しますが、急激な状態悪化に備えて(特に手術できる施設から遠方の場合は)搬送しておく必要があります。
胃・小腸 のエコーについてはまた別の機会に 。。。
Mahalo