馬・馬・馬

2020年の北海道獣医師会雑誌に載せていただいた支部リレー通信の記事です。

若かりし頃、馬の診療を生業とする方法がわからず、ただどうしても馬の診療をしたくて。

これから馬の獣医師を目指す学生さん、がんばって。

馬・馬・馬の生活

宮崎大学6年生のころに、北海道NOSAIの先生が来られて就職説明会を開いていただいたことを覚えています。その時のアンケートで、診療したい動物を第一希望から第三希望まで書かなければなりませんでした。馬の診療がしたかった私は、『馬・馬・馬』とすべての欄に馬と書いて、担当の先生を困らせてしまいました。

1の馬(仕事)

2005年に卒業し、2006年の7月から社台ホースクリニックという馬の専門病院で働いています。社台ホースクリニックは、新千歳空港から車で約15分の距離にあり、社台グループだけでなく、グループ外の馬の診療や手術をする馬の二次診療施設です。年間の手術件数は約800件、のべ診療件数は2300件を超えます。私が就職したころは、獣医師3人に看護師2人、事務1人体制でしたが、15年を経過した今は、獣医師7人、看護師5人、事務2人ととても人数が増えて賑やかになりました。

 昨年の3月には帯広畜産大学と連携協定を締結したことで、難しい症例を共有したり、大学でCT検査を行ったり、これまでになかった診療が可能となり、常に変化し続け、常に勉強できる素晴らしい職場です。

 今年の9月には、第13回社台ホースクリニックカンファレンスという勉強会を開催しました。2008年から毎年開催していたのですが、昨年は新型コロナウイルスの影響で中止していました。今年は、負けてなるものかと意気込んで初のWeb開催にチャレンジしました。慣れない言葉や慣れない操作で、大変な準備となりましたが、なんとか無事に終えられたことはよい経験になりました。直接に仲間の顔を見ながら討論するのも楽しいですが、遠方からも気軽に参加できる利点は素晴らしいものです。

2の馬(趣味)

昨年の6月に近隣の乗馬クラブで16歳の疝痛馬(ゾロ君)の診療に行きました。腹部エコー検査で小腸の機械的閉塞が疑われたので、開腹手術を行いました。普段は競走馬の手術が多く、乗馬はそれほど多くはありません。退院してからの術後治療などで、往診に行くたびに、馬に乗りたい気持ちがふつふつと蘇ってきてしまいました。

自分のおなかのエコーを眺めるゾロ君

それからというもの、休みのたびに足しげく乗馬クラブに通い、乗馬を再開することになりました。手術後に回復したゾロ君にも乗せていただきました。楽しくなりすぎて、翌年には引退サラブレッドを購入し、今年の8月には20年ぶりに馬術大会にも参加しました。成績はイマイチでしたが、手術前の緊張感とは違った、何とも言えない高揚感がたまりません。もう二度と乗馬から離れられそうにありません。

3の馬(夢)

国内の馬の飼養頭数は約7万5千頭です。ですが、北海道や特定の地域を除いては、多くの馬が全身麻酔を必要とするような疾患に対する十分な医療を受けられる状況下にありません。実は、国内には全身麻酔が可能な施設が複数あるので、これらを生かした全国ネットワーク形成が将来の夢です。そのためには、飼養管理者・一次診療をする獣医師・オーナー・施設など、多くの方々に情報を発信し続ける必要があると感じてきました。同時に、馬の素晴らしさをもっと広め、次世代に伝えることで、馬が伴侶動物としてもっと愛される環境になることが、医療の必要性と理解を深めると思っています。

馬で変わった我が人生、今度は馬に恩返しをする番です。そのために、『馬好きさんのライト獣医学/Equine Heart Japan』というブログをはじめました。馬を診なれない獣医師にも参考になる内容を心がけています。ぜひご一読ください。

人の輪がつながり、馬と一緒にハッピーになる。いつかそんな時代が来ることを期待し、仲間や賛同者を募り、大きな輪にできる日を夢見ています。

Mahalo