馬の循環器疾患
馬のプアパフォーマンス(運動能力低下)は、
- 筋骨格系の疾患 : 骨折 ・ 屈腱炎 など
- 呼吸器系の疾患 : 喘鳴症(のどなり) など
- 循環器系の疾患
と言われています。 循環器疾患はなんと3番目に多いとされているのです。
。。。でも、馬の心臓が悪くて なんて話を聞いたことある人は少ないのでは??
ヒトもそうですが、心臓の疾患の多くは時間をかけて徐々に悪化していく傾向にあります。
つまり、最初は小さな問題で日常生活に全く支障のない程度の心臓機能の低下は、気づかれないことが多いのです。
ですが、アスリートである馬にとっては、日常生活に支障のない程度の心臓の機能低下が、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。
また、馬の循環器疾患を考えるうえで、騎乗者の安全を考慮することはとても大切です。
騎乗運動中の心疾患に起因する不慮の事故(突然倒れるなど)は、騎乗者にも重大な危険を及ぼします。疾患の早期発見、疾患を有する馬の許容可能な運動強度、あるいはそれに伴う危険性を把握しておくことは、安全管理上で重要な課題といえます。
ふだんの管理から、愛馬の小さな変化に気付いてあげられるように観察し、異常を感じたら獣医師に相談してみてください。
循環器疾患の症状
運動を嫌がる(馬装を始めると震えだす・馬場入りを拒む)、
今までできていた強度の運動ができなくなる、
運動後(中)に呼吸の回復(もどり)が悪い・様子がおかしい(不穏・疝痛様症状) などは、プアパフォーマンスと呼ばれる症状かもしれません。
他にも、原因不明の発熱が続く・体重減少・咳といった症状も起こり得ます。
心臓の正常なポンプ機能が働かなくなることを、心不全といいます。全身に血液を送り出す左心系の機能が悪化する左心不全と、右心系の機能低下をあらわす右心不全、どちらの機能も低下した両心不全にわけられます。
赤矢印は
酸素化された血液(動脈血)
青矢印は
酸素が少ない血液(静脈血)
左心不全とは、酸素化された血液を全身に送り出すことができず、肺から戻ってくる血液を受け取りにくい状態になります。
肺静脈の圧が上がると、肺の血管から血液中の水分が漏れ出し、肺に水がたまります(肺水腫)。
そうすると、肺のガス交換能力が低下してしまいます。そのため、息を吸って酸素を取り込んでも、血液が肺を通過する間に十分な酸素をとりこめなくなってしまいます。
このことから、左心不全では全身の 酸素欠乏 と 肺水腫 の症状が目に見えるようになります。
すなわち、運動能力の低下・チアノーゼ・咳 といった症状になります。
右心不全は単独で発生することはめずらしく、両心不全として起こることがほとんどです。
右心房圧が上昇することで、全身から戻ってくる血液を心臓が受け取りにくくなります。
それによって、心臓に戻ってくる静脈に圧がかかるため、
頸静脈の怒張(どちょう;目に見えて張ること)や拍動がみられます。
~頚静脈の評価をする際のちょっとした注意点~
頚静脈拍動の評価は、全身から血液が戻ってくる右心房圧(中心静脈圧)の指標となります。
安静時の右心房圧は5-10mmHgですから、頭を通常の位置(心臓よりも高い位置)にあげたとき、頚静脈は頸の根元側1/3くらいまでみえるのが正常です。うっ血性心不全が悪化すると、より高い位置まで頚静脈が怒張し、さらに悪化すると拍動がみられます。
また、高い圧がかかることによって、末梢の血管から血液中の水分が漏れ出してしまいます。
これによって、四肢や胸下のむくみがみられることになります。
これらの症状は、 心臓が 正常なポンプ機能を果たしていないことを示している状態です。
心臓の疾患にも種類がたくさんあります。
検査方法に関しても徐々に紹介しますが、まずは、このような症状がみられたら、獣医師に相談してみてください。
Mahalo