MENU
獣医療

馬の変形性関節症について

変形性関節症(DJD)とは 

 関節内の正常な組織が劣化し始めることで発症します。

正常な関節の軟骨は、骨の端を覆い、関節が滑らかに動くためのクッション性と低摩擦の表面を作り出しています。

DJDの初期では、この軟骨表面が薄くなり始め、進行すると軟骨がほぼ失われて

「骨と骨が直接擦れ合う状態」 となります。

さらに進行すると、骨の縁、関節包、関節液などがそれぞれ変化を起こし、DJDに伴う痛みを引き起こします。DJDは主に関節の慢性的な摩耗によって発生するため、高齢馬に最も一般的です。

しかし、外傷、感染、あるいは体形的要因による関節の炎症が、DJDの発症を促すこともあります。

変形性関節症(DJD)

軟骨と周囲の組織の損傷を引き起こす慢性疾患で、痛み、関節のこわばり、機能障害が特徴

  • ・ 加齢に伴い、非常によくみられる
  • ・ 痛みや腫れ、骨の過剰な増殖が特徴
  • ・ 病態の初期は、運動の初めに可動域の減少(こずみ・こわばり)
  •   動いているうちに動きが良くなる。(関節液が潤滑液としての働く)
  • ・ 症状とX線所見に基づいて診断される
  • ・ 治療は、抗炎症剤・関節サプリメント・関節内薬物投与・手術など
繋関節(近位指節関節)の関節症 関節の周囲に骨が増殖している

馬の関節症

関節症はどの関節でもおこります。

蹄関節・繋関節・球節・腕節・肩関節・膝関節・飛節…頸にもおきます。

おおむね、5歳以上の競走馬・競技馬に多い疾患で、徐々に悪化します。

元々の肢向きの悪い馬では、関節に無理な負荷がかかるのでなりやすくなります。

※繋ぎの立っている馬、蹄尖が内向きの馬、蹄の小さな馬、蹄骨角度が悪い馬)など

初期は

パフォーマンス低下 ・態度の変化 ・動作が遅くなる ・頻繁に横になる ・運動中の左右差やこわばり

徐々に進行すると 跛行 します 

関節症の治療

関節内投与薬(Intra-articular medications):

最も一般的な治療で、薬剤や生物製剤を直接患部の関節内に注入します。

ステロイドは強力な抗炎症薬であり、馬や人間のDJD管理に長年使用されてきました。

ヒアルロン酸は正常な関節液の構成成分で、単独あるいはステロイドと併用して使用されるます。

患者自身から採取・加工した生物製剤を関節内に投与する手法も一般的となっています。

多血小板血漿(PRP)
経口抗炎症薬(Oral anti-inflammatory medications):

全身的な抗炎症作用を期待して投与します。代表的な薬剤にはフェニルブタゾンやフルニキシンメグルミンがあり、広く使用されていますが、長期使用では副作用を引き起こす可能性があります。

近年では長期使用しても副作用のほとんどみられないフィロコキシブが好まれています。

全身注射薬(Systemic injectable medications):

静脈内ヒアルロン酸やポリ硫酸化グリコサミノグリカン注射剤があります。

これらの薬剤の作用機序は完全には解明されていません。

両者には抗炎症作用があると考えられており、臨床的および顕微鏡的所見の改善をみとめたいくつかの論文があります。

経口サプリメント(Oral supplements):

最も一般的なサプリメントにはグルコサミンやコンドロイチン硫酸が含まれます。これらは軟骨の構成要素であり、補給することで健康な軟骨を支えるという考え方ですが、臨床症例における有効性を支持する研究結果は一様ではありません。

さらに、これらのサプリメントの内容は非常にばらつきがあり、ラベルに記載されている成分が実際に含まれているかどうかも問題となります。

外科治療された繋関節症の馬

19歳の障害競技馬。 130cmクラスの競技にでていた能力のある馬でした。

2年ほど前から左前肢の跛行が徐々にはっきりとして、競技を引退していました。

触診と超音波検査で浅屈腱の外側枝に損傷がありました。

左前肢の繋の関節の関節症の馬のCT画像

繋関節の固定には関節を開いて、関節軟骨を掻把して、関節が曲がらないようにプレートとスクリューで圧着する方法があります。(右図)

この馬は、来院した時点でかなり関節周囲に骨の増殖が起きており、肢も曲がらない状態に近かったので、より侵襲の少なく、早く関節固定できる手術方法を選択しました。

親愛なるDr.Ducharme先生の論文。 ほぼ動的に動きのなくなった関節に対し、太い針を刺して、そこからレーザーを挿入して関節内を焼灼します。

利点は

① 従来の方法より侵襲が明らかに少ない

② 痛覚神経を失活させるため術後に極めて早期の痛覚消失に繋がる

③ 関節軟骨表面と滑膜の炎症細胞を減少させる

術後のレントゲン

レーザーで関節内を焼灼した後に、関節内をまたぐScreweを挿入します。

さっそうと歩くこの動画から数カ月、今ではたまに軽い騎乗運動ができています。

最後に

 実は、海外から購入した乗馬で、わずか数年で関節症になる馬を数頭みています。 

 購入時のレントゲン検査は、売却側の指定獣医師が「問題ない」と言っても信用してはいけません。

 ※ レントゲンだけでなく、様々な検査結果から購入を控えた方が良いですよ。と伝えることもあります。

 購入前検査は、世界的なコンセンサスがないものの、各国(特にドイツ・オランダなど)では明確な規定があります。

 検査所見を事前に提出するのが当たり前なら、検査所見をみて判断することも当たり前です。売却側の責任と、購入側の自己責任があります。「そんなの見ていない」なんて後で言っても、時すでに遅し。

 是非、ご相談ください。

Mahalo

https://may-the-horse-be-with-you.xyz/analgesia2/