
脊椎動物の神経系は
中枢神経系(脳や脊髄) と
末梢神経系(顔面神経や坐骨神経など)
に分けられます。
末梢神経は、脳 からでるか 脊髄 から出るかによって分けられます。
『脳』から伸びる神経は
脳神経
と呼ばれ左右12対あります。(人と馬で同じ)
『脊髄』から伸びる神経は
脊髄神経 Spinal Cord
です。
脊髄神経には、感覚神経も運動神経も含まれます。
四肢や体幹に伸びる神経の多くは、この脊髄神経です。
図は、馬の脊髄神経の分布をしめしたものです。
どの神経も、重要な役割があり、脊髄を大きく損傷する(機能が損なわれる)と、脳からの信号が伝わらなくなるため、
動きが悪くなる
感覚がおかしくなる
などの症状につながります。
図でお分かりのように、脊椎(背中の骨)は、多数の関節から構成されています。さらにその間から多くの神経を分布させています。
カイロプラクティスは、神経を直接触るのではなく、可動域の制限された関節の矯正によって、脳と末梢神経の連絡をスムーズにして、からだ本来の機能を発揮できるように促す治療法です。
『からだ本来の機能』
なんだか期待の膨らむ言葉です。
先天性・あるいは加齢や運動(競走)などによって、長い長い神経の通り道はスムーズでなくなってしまいます。
神経のトンネルが広がった時、あなたの愛馬の動きが変わるかもしれません。
動物カイロプラクターの磯部先生に執筆していただいた、馬のカイロプラクティック第4弾。
施術することで体にどのような変化があらわれるのでしょうか。
今回は、治療のおはなし。
今回も磯部先生の熱意溢れる内容です。お楽しみください。
馬へのカイロプラクティックと生命力の可能性
僕は常々カイロプラクティックを受けるのは「生まれてすぐが一番良いです」とお伝えします。
それは出産時に母体は勿論ですが、赤ちゃんへの身体のストレスも相当掛かるからです。
産道は狭く、お母さんの腹圧を受けながら赤ちゃんは身体を丸めて出口を目指します。
首が出口で引っ掛かる、へその緒が首に巻きつく、逆子、鉗子で頭を挟まれ強い力で引っ張られるなど。
出産時には赤ちゃんの背骨と脊髄神経に強いストレスが掛かります。

それらが要因となり、まだほぼ軟骨と言えど赤ん坊の背骨の異常なズレが神経系へ圧力を掛け様々な問題の原因と成り得ます。
有名なのがボストン大学のアブラハム・トービン医師が行った「乳児突発死症候群」として亡くなった赤ちゃん達の解剖です。
乳児突発死症候群とは、問題のみられなかった赤ちゃんが寝ている間に突然死亡するというものです。
Dr.トービンの報告では、7割以上の子に第一頸椎の異常な捻じれが確認され、脊椎損傷と乳児突発死症候群に関連性が有ると指摘されています。
症状が無い赤ちゃんや子どもを持つ親御さんの一般的な考えでは、
「赤ちゃんだから肩こりや腰痛なんて無いだろう。」
「子どもは若いから大丈夫だろう。」
となります。
しかし現実は、身体の異常を症状として体感出来るのは僅か二割程度と言われています。
殆どの場合は自覚症状無しに悪化するということです。
故にカイロプラクティックでは、まず生まれた瞬間から赤ちゃんの背骨及び神経系に異常が無いかを検査するのです。健康体で力強く成長する為に。
背骨を持つ動物達も全く同様です。
特に馬の赤ちゃんや子どもへカイロプラクティックを提供するのは、とても意義深い事だと感じています。
例えば競走馬として生まれた馬は、多くの生存競争を勝ち抜かないと生きていけません。
折角良い血統で交配し、無事に赤ちゃんが生まれたとしても、
背骨が捻じれ、後ろ足がふらつき、左右の足の長さも全然違い、虚弱体質となれば買い手が付かないという現実も在ります。
しかしカイロプラクティック的には、
その状態は別に生まれつき等ではなくて、出産時の外傷などで背骨の異常なズレが起きて、神経への圧力や身体の歪みが生じた「結果」かもしれないのです。
原因をみつけ、その馬が持つ本来の力と可能性を解き放つ事こそ、
我が國にもっと名馬が生まれ、怪我や投薬・手術が少なく、屠殺も減らせる様な、
馬とその育成や治療に携わる人達にとって理想的な社会と成ると確信します。
内在する叡智(Innate Intelligence)
僕は臨床を通じて、日本でも多くの馬達(特に赤ちゃんや子ども)にカイロプラクティックを提供するべきだし、国内にもっと動物カイロプラクターが増える必要性があると感じています。
カイロプラクティックは自然法則に則り、身体を最適で快適な状態へと導く術です。
石を空中に放り投げると100回中100回必ず下に落ちる、これが重力という自然法則の力です。
背骨の異常なズレが神経系に圧力を掛けると、身体の機能は十分に発揮出来なくなる。
これもまたカイロプラクティックが発見した自然法則なのです。
神経線維に羽を乗せる実験では、数分後には既にその神経伝達能力は4割以上低下するという結果も在ります。
受精卵から細胞分裂を繰り返して身体を創り上げ、
何十兆という体中の細胞が一つの生命体として内外の環境に常に適応し、
傷ついた細胞を入れ替え、ウィルスなどが身体に侵入すれば必要な温度まで発熱させ退治し、意識の有無に関係なく心臓を動かし続けて生命を維持する。
この生まれた時から既に内在する奇跡的な力を、
カイロプラクティックでは
「内在する叡智(Innate Intelligence)」 と呼びます。
細胞は人間や動物に於ける最小単位の生命体であり、この内在する叡智は全ての細胞一つ一つに宿っていると考えられています。
細胞達が肝臓や腎臓、脳などの一組織としてそれぞれ働き、
生命の存続に必要な適応を常に行う為には統率(指揮系統)とそれを可能にする情報網が必要です。
その指揮系統こそが脳から身体中くまなく張り巡らされた神経系なのです。
この神経系を介して身体のあらゆる問題への認識と対応を常に正しく行う内在する叡智こそ世界最高の名医と言えます。
医学の父とされるヒポクラテスは、
「全ての人の中に医師が居る。私たちはその医師が働ける様に手助けするべきである。」 と述べています。
カイロプラクターは何故診断と治療を行わないのか?
それは内在する叡智が生まれた時から身体に宿り常に働いているのだから、
その名医が快適に働ける様に支えた方が自然の理に適っていて回復効率が良いという考えからです。
その馬に症状や病名が付いて無いから「健康」ではありません。
症状が無くても、元氣な状態でも身体機能は低下している可能性が有ります。
馬自身の身体が持つ天性の力とその可能性を、より快適に最高の体内環境で発揮する為にも是非カイロプラクティックを受けて頂きたいですね。
施術による体の変化
カイロプラクティックは1895年9月18日に生まれました。
奇遇にもレントゲンの発明も同じ年の11月8日でした。
そして1910年からレントゲンを導入し背骨の状態を可視化し、科学的に検証する事をはじめました。
現在はCTの発展も在り、カイロの画像分析の主流です。
どの椎骨にどの程度のズレが在るのかをミリ単位で確認し、精密に施術する上でも大切な情報と成ります。
施術対象の椎骨が脱臼または粉砕骨折している場合はカイロプラクティックの禁忌と考えられており、その判断材料にも成ります。
カイロ独自の科学的追究は更に続き、
1924年には独自の体表温度計測器ニューロカロメターの発明などで「何時背骨のズレにより神経系に圧力が在るのか」を科学的に検証するように成りました。
近年はタイトロンという背中の体表温度計測器が主流となり、自律神経(主に交感神経の働き)の状態を可視化し、臨床に応用しています。

タイトロンC-5000による体表温度計測
向かって右が施術前。左右の温度が乱れ、自立神経も乱れた状態。
向かって左が施術後。左右の温度差が低く、自立神経が安定した状態。

向かって右が施術前。首から腰までの体表温度に大きく差がある状態。
左は施術後。首から腰に掛けて体温が高く全体的に調和した状態。
最近米國では身体全体の温度差を可視化する技術を応用し、施術前と施術後の科学的な変化を証明出来るようにまで成りました。
動物カイロプラクティックでも馬へ体表温度検査を用いるカイロプラクターが出てきました。


カイロプラクティックとはこの様に「独自の生命観と自然哲学」、「カイロの理論を証明する科学」、「哲学と科学を体現する芸術」の三要素で構成された極めて独自性のある専門職です。
だから米国では西洋医学の医師や獣医師と、彼らとは全く異なる考えと貢献を可能とするドクター オブ カイロプラクティックの二つのドクターが居るのです。
それぞれの目的や役割が全く違うからです。
社会にとっても利用する目的や用途に合った選択肢が増えて、とても良い事だと想います。
日本でも人々や動物達が当たり前にカイロプラクティックを知っていて、活用出来る時代が来るようがんばります。

最後に
馬カイロプラクティックで、馬の幸せと、オーナーの幸せを願う磯部先生に、4度の連載をしていただきました。
普段は、動物だけでなく人のカイロプラクティックをされています。
病院のロゴには、人を中心に 馬や犬・猫・鳥、さらには亀まで。。。
最近は病院がお休みの日に、北海道内の馬の施術を廻られているそうです。
実は、この連載を機に いくつかの質問が寄せられています。
せっかくの機会ですので、磯部先生への質問をまとめてお渡しし、回答いただこうと企画しております。
ご質問のある方は、ご連絡ください。
Mahalo