多くの学生さんが実習に来られます。馬が好きで馬の獣医師になりたい学生、競馬が好きで馬の獣医師になりたい学生、馬は知らないけどちょっと興味があったので勉強しに来た学生、実習に来る理由はさまざまです。
実習生の7割以上は、卒業後に国内で馬の臨床獣医師をしたいと考えているように感じます。
ですが、馬の獣医療は小動物のように一般社会のなかで遭遇する機会が少ないこともあって、情報の収集がとても難しいと思います。
九州から就職した私もそうですが、『馬やるなら北海道がいいんだろうなぁ』くらいの情報しかなく、どのような団体や、就職先があるのか全く分からず困って、とりあえずインターネットで『馬』と入力して検索していました。
今回の記事は、国内で馬の獣医師として働くために、どのような選択肢があるかを紹介したいと思います。
個々の診療所などの採用情報等については、記事最下段をご覧ください。
国内の馬産業
令和4年の農林水産省の報告によると、国内の馬の頭数は約78,000頭。
そのうち、軽種馬(競走馬)は約45,000頭です。表の中で乗用馬に分類されている中にも、引退した競走馬が多く含まれているので、サラブレッドがかなりの割合を占めることになります。
そのサラブレッドの生産の95%以上は、北海道で行われています。これは、優秀な種牡馬が北海道に集まっていること、繁殖雌馬と仔馬の放牧地を確保できる土地があること、などが主な要因です。
生産は北海道が中心なので、馬の頭数も北海道が多く、必然的に馬の獣医師も北海道に多く集まっています。
ちなみにサラブレッドの生産頭数は、1994年に12,459頭と最多を記録して以降、2012年には6,837頭まで減少しましたが、その後再び増加し2022年には7,782頭まで回復しました。馬の頭数が増えれば、必要な獣医師の数も増えていくかもしれません。
馬の獣医師の仕事
馬の獣医師は主にどんな仕事をしているでしょうか?
とても大まかに分類すると
1.調子の悪い馬の治療 ; 病気の治療など 、 手術など
2.繁殖(生産)の仕事:直腸検査 など 、 多くは仔馬の治療も兼ねる
3.飼養管理にかかわる仕事 : 栄養指導・放牧地管理など
4.スポーツ医療 : 調教管理など
5.一般管理にかかわる仕事 : 整歯 など
これらの他にも、臨床からは離れた仕事も沢山ありますが、臨床に限定するとこのような内容です。
卒業後の就職先について
就職する先としての選択肢は
- 開業医
- 団体職員(JRA・地方競馬全国協会・軽種馬農協・軽種馬協会・NOSAIなど)
- 牧場
- 自身で開業
1.開業医(病院など)に就職する
北海道に限らず、国内には競走馬や乗馬を問わず診療している開業医が沢山います。当HP内に掲載した開業医様もいらっしゃいますが、あまり新卒採用の情報は広がっていないでしょう。
日本にはJRAのトレーニングセンターとして茨城県の『美浦トレーニングセンター』、滋賀県の『栗東トレーニングセンター』があります。ここには、次に紹介するJRAの獣医師以外にも、開業獣医師がいます。
地方競馬場も同様に、主催側に所属した獣医師(開催獣医師)もいますが、競馬場には開業の獣医師もいます。
競馬場やトレセン内の馬は、基本的にはアスリートなのでスポーツドクター的な仕事がメインになります。
2.団体(JRA・軽種馬農協・軽種馬協会・NOSAI)などに就職する
団体によっても業務内容が全くことなります。
支える仕事 | 仕事の紹介 | 新卒採用WEBサイト | JRA 日本中央競馬会 (jra-saiyou.jp)
各地に軽種馬農協があります。北海道であれば、日高軽種馬農協・胆振軽種馬農協など。
それぞれのHPに採用情報が掲示されていることがありますので、興味のある方は、業務内容と採用情報のチェックをしましょう。
NOSAI(農業共済)は、牛・馬・豚などの産業動物診療を行う団体です。
NOSAI獣医師を目指す人のためのQ&A|仕事内容や進学支援制度などを詳しく紹介!|全国農業共済協会 (nosai.or.jp)
3.牧場に就職する
いくつかの競走馬の生産牧場では、獣医師を採用しています。牧場に就職した獣医師たちは、その牧場にいる繁殖や仔馬、育成馬、休養馬などの管理する仕事がメインになります。
追記
『手術がしたい』と言う学生さんも一定数います。
馬は、とても体の大きな動物ですから、安全に全身麻酔をかけて手術をするには特殊な施設が必要で、人手も必要になります。加えて、犬や猫ほどは手術件数も多くないので、病院数は国内に数えられる程度です。
二次診療所と呼ばれるこれらの施設は、大学・JRA・地方競馬場・NOSAI・軽種馬農協・社台ホースクリニックなどにあります。
各々の団体や施設において、採用方法も異なるので興味のある方はHPで調べてみてください。
採用情報
このほかにも、上記の各団体のHPには『獣医師採用情報』があります。
とても大雑把な内容ではありますが、学生さんにとっては情報を整理するために役に立つと思います。
就職先を考える際に参考にしてみてください。
Mahalo