疝痛の治療には、外科手術が必要となることがあります。ですが、全身麻酔下の手術となると
- 手術の成功率(救命率)
- 手術後のパフォーマンス
- 手術費用 + 入院・後治療の費用
獣医師から手術を薦められた際に、オーナーは手術を実施するかどうか判断しなければなりません。
そのために、獣医師は適切な説明を行い、オーナーの理解を得るよう努める必要があります。現在、この興味深い結果について、世界の多くの診療所から報告があります。
ですが、同じ疝痛の治療でもこれらの結果は、術前の全身状態、病気の種類(いたみの原因)、医療施設によって大きく異なります。国内では、開腹手術をたくさん実施している施設は限られます。そして、開腹手術に対する十分な知識と技術を有する外科医の数も限られています。
2020年に 宮越大輔先生 が北海道獣医師会雑誌に 結腸捻転発症馬の短期生存率に影響を与える要因
という報告をされています。この研究では、結腸捻転と診断されて開腹手術した47頭中37頭(78.7%)が退院したと報告されています。
2015年には 社台ホースクリニック(鈴木)が 『サラブレッド334頭の急性腹症に対する開腹手術の術後成績調査』を獣医麻酔外科学会にて報告しています。






多くの症例を含んだ調査ですので、開腹手術を実施したものの、手術中に予後不良と判断してあきらめざるを得なかった症例や術中に死亡した症例も含まれています(381頭中60頭:15.7%)
この報告では短期生存率(退院率)は出していませんが、それらの馬を除いた1年後の生存率は77.6%でした。
その他、術後合併症の発生率や、妊娠に与える影響などについても報告しています。術後のパフォーマンスに関する結果は含まれていませんが、手術後に競馬でG1レースを勝った馬もいます。
この報告は2005年~2015年のものであり、現在はさらに向上しているように感じています。
さて、この結果どうでしょう。みなさんの予測よりも高かったでしょうか?それとも低かったでしょうか?
宮越先生の論文にもありますが、これらの結果には 手術前の全身状態 が大きく影響を及ぼします。
オーナー様、管理者様とこれらの情報を共有して、1頭でも多くの馬たちを助けられるようになると良いですね。