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リハビリについて

 あなたの馬が怪我や病気で、一定期間の運動制限などをしたのちに運動を再開します。なにから始めますか?

明確な答えがあるわけではありませんが、こんなことを考えてみてはどうでしょうか?

プロプリオセプション(固有感覚受容)とは

  『プロプリオセプション』 と聞いたことがあるでしょうか? 日本語では、固有感覚受容 と訳されます。空間認識と固有感覚の関係性を表す言葉で、自分の体と外界(空間)との位置関係を把握する能力です。生き物は、自分の体を見たり、身近にある対象物に触ることで自分の体を意識します。

その際に重要な働きをするのが 固有受容感覚器 とよばれる感覚器です。感覚器といえば、目(視覚)、口(味覚)、耳(聴覚)、鼻(嗅覚)などが思い浮かぶと思いますが、これらは靱帯・筋肉・関節などに分布していて、伝わってきた傾きや地面の変化、姿勢の変化などの情報を脳に伝える役割を持っています。

脳はこれらの情報を総合的に集約し、自身の正確な位置情報をつかみ取り、手足を適切に動かす指示をだしています。

ころっけ君のプロプリオセプションテスト

プロプリオセプションの重要性

 生まれたての仔馬が、1時間以内に起立して歩き回ることができるようになるのは、受容感覚の発達が非常に速いのでしょう。

 ヒトにおいても、バランストレーニングを実施することで、サッカーやバスケットボールをする高校生の足首捻挫のリスクが軽減できたとの報告があります。

 成馬の体重は、人間の約10倍。関節の構造や強度は、さほど大きく違わないにもかかわらず、捻挫して関節にかかる衝撃は、数十倍となるでしょう。損傷を受けた後の生物の感覚は、新たに加わった痛みや歩行時の感覚によって、固有感覚が変更されます。馬が、自分の損傷部位を正確に理解していないにもかかわらず、関節の可動域を制限したり、他の動きでカバーしたりして痛みをカバーできるのは、この感覚のおかげです。

 傷がいえる過程において、これらの感覚が正常に戻るのを手助けしてあげることが、再発を防ぎ、なめらかな動きをもたらす近道になるかもしれません。

負傷個所や手術部位だけに注目するのではなく、総合的な感覚の回復を目指すことが、パフォーマンスの回復にとって重要です

リハビリテーションに生かす 

 正常な受傷前の感覚を取り戻すために、どうサポートしてあげられるでしょうか?

実際にできる方法としては、多様な刺激を与えてあげることです。つまり、アスファルト・砂利・コンクリート・深い砂地・芝・雪の上、ウッドチップなど、蹄底から繋・球節・管へとさまざまな刺激を与えて、神経を活性化させてあげることが、プロプリオセプション機能の活性化、ひいては脳の活性化につながります。

 このような足場の上を、最低5~10分、並足や速足させることで、感覚機能の再教育が促されます。

また、運動前のストレッチも物理的に感覚器を刺激します。頚のストレッチ、肢のストレッチなど、無理やりに動かすのではなく、馬がリラックスした状態でやると効果が大きくなります。

 もともとは、常に動いている動物です。そんな彼らが数十時間も狭い馬房ですごし、馬房から出てすぐに運動することには、それなりの危険性があると認識しておくと、違った目で馬を見ることができるようになるかもしれませんね。