獣医療

副鼻腔のお話(前編)

 人間でもよく『副鼻腔炎(ふくびくうえん)』になった。なんてお話を聞きますが、ウマにも副鼻腔炎があります。

馬の副鼻腔炎

副鼻腔は、馬の頭の中にある空気で満たされた空洞です。副鼻腔には、上顎(うわあご)の前臼歯と後臼歯の歯根の一部が飛び出しています。

ヒトの副鼻腔は、4対の構造で、左右合わせて8つの副鼻腔があります。

一方、馬には6対あり、左右合計で12部屋ありますが、それぞれが複雑に交通していて

・ Rostral & Caudal

  Maxillary Sinus : 

  吻側上顎洞 と 尾側上顎洞

 Frontal Siuns:

  前頭洞

Sphenopalatine Sinus :

  蝶口蓋洞

Dorsal & Ventral

 Conchal Sinus :

背鼻甲介洞 と 腹鼻甲介洞

合計12に分けられます。

健康な馬では、副鼻腔の粘膜から分泌される粘液が、副鼻腔から鼻腔へと自由に流れていきます。

副鼻腔を構成する骨は非常に薄く、病気によって簡単に歪んでしまいます。

副鼻腔炎

 副鼻腔炎は、副鼻腔の一つまたは複数の炎症または感染を指し、副鼻腔の病気の中で最もよく見られるものです。副鼻腔炎は、一次性、二次性または、急性、慢性に分類されます。

一次性副鼻腔炎は、副鼻腔内の細菌感染症であることが多く、副鼻腔内に膿がたまります。原因となる菌は連鎖球菌がであることがほとんどです。

二次性副鼻腔炎は、歯根の感染や骨折、副鼻腔嚢(Sinus Cyst))など、他の主な原因によって起こる副鼻腔の感染症のことです。上顎洞の中にある臼歯の歯根部は、二次性副鼻腔炎を起こしやすいといわれています。

症状と診断

症状:

呼気の異臭 ・ 膿性鼻汁 ・ 発熱

顔面の腫脹 ・ 流涙 ・異常呼吸音など                      

診断 : 

頭部の打診 (膿がたまっていると こもったような音がする;Dull Percussion)

レントゲン検査  ・ 内視鏡検査 ・ Sinuoscopy(副鼻腔内視鏡) など

正常馬の正面レントゲン画像
(右は副鼻腔の場所を囲ったイメージ図)

緑:尾側上顎洞   赤:吻側上顎洞   紫:前頭洞と鼻甲介洞

正常馬の 横方向レントゲン画像 (右は副鼻腔の場所を囲ったイメージ図)

赤: 吻側上顎洞  青: 尾側上顎洞 緑:背鼻甲介洞 水色:前頭洞 黄色:蝶口蓋洞

上の正常な画像と比べてみてください。 レントゲンで、水分(膿など)は白く映ります。骨はもっと白く映ります。空気は黒です。 黄色い線で示したラインは、副鼻腔の中にたまった 液体(膿)の水面ラインです。

馬の頭の角度は斜めでも、水は水平にうつるので、このような Fluid Line がみえることが特徴です。ただし、たまりすぎているときは真っ白で、ラインが見えないこともあります。

治療 と 予後

 抗生剤の投与だけで治ることもあります。 抗生剤の治療で治らない場合は、必要な部位にドリルやトレフィンと呼ばれる機械で穴をあけて、副鼻腔を洗浄します。

 ちょっと一般の方に紹介できる画像ではないので、自主規制。。。。

 通常は、抗菌剤の投与と一緒に抗炎症剤が使用されます。これによって、症状や外科処置に伴う痛みや腫れなどを軽減することが可能となります。 穴をあけた場合は、細菌培養検査を行い、必要に応じて適切な抗菌剤の使用を一定期間続けます。

 あけた穴、 美容的にどうなの??? って心配になる方もいらっしゃると思いますが、心配ご無用。

 ほとんど肉眼ではわからない程になります。 副鼻腔炎の原因疾患がしっかり治療されれば、再発の可能性は低くなります。

さいごに

 今回ご紹介したのは、一般的な一次性副鼻腔炎の内容でした。

 次回、ちょっと複雑だった二次性副鼻腔炎の乗馬のお話を紹介しようと思います。

 こうご期待

Mahalo