獣医療

馬のOCDについて

セリや、クラブ馬の募集時に手術歴が公表されるようになってきました。

と書かれていることがあります。OCDとはなんでしょう。

🏇毎日のようにOCDを扱ってきた、馬の獣医(外科医)が答えます。🏇

OCD(Osteochondritis dissecans)は、離断性骨軟骨症(りだんせいこつなんこつしょう)と呼ばれる成長期にみられる疾患です。

今回は、OCDについてよく聞かれることについてご紹介します。

  1.  馬のOCDとは (病態と罹患率)
  2.  OCDの症状と診断
  3.  OCDの治療
  4.  OCDの予後や競争成績

馬のOCDとは      (病態・罹患率)

 OCDは、軟骨と骨に影響を与える比較的一般的な疾患です。

軟骨内骨化(胎児期からの発育過程における骨形成)とよばれる 成長過程 の異常 が直接的な原因です。

成長期にみられる病気なので

「発育期整形外科疾患(DOD:Developmental Orthopedic Disease)」と呼ばれる疾患群の一つに分類されます。 2歳以下の若い馬 におおくみられます。

関節内に形成されたOCD病変(変性軟骨)は、厚みが不規則で正常な骨よりも弱いため、軟骨や骨のフラップができます。

このフラップは部分的に骨の本体にくっついたままであることが多いですが、本体から離れて関節内に落ちることもあります。

この状態は、場合によっては関節内に炎症を引き起こし、その結果として関節液が増量します。

OCDの原因は一つではなく、沢山の要因が絡み合って 発生します。

  1.  大きな体と急激な成長
  2.  栄養 : 高カロリーな食餌、微量ミネラルのアンバランス(銅不足)
  3.  遺伝 : おそらく遺伝も関係していると考えられている
  4.  ホルモンバランスの異常 : インスリンと甲状腺ホルモン
  5.  外傷と運動 : 運動で軟骨へ負荷がかかって発生したり、離断しかかった軟骨が剥がれたりする

OCDの症状と診断

症 状

 年齢と使役方法によって大きく異なります。放牧だけの若い馬は、症状がない こともよくあります。

そのため、セリ前の検査(レントゲン検査)で発見されて、問題を起こす前(症状がみられる前)に骨片摘出手術をされることが珍しくありません。 臨床症状は、OCD全症例の5~25%にあらわれます。

もっとも一般的な症状は 関節液の増量 です。発症部位や病変の大きさによっては跛行することもありますが、最も一般的にみられる関節『飛節』のOCDで跛行することはありません。

一方で、『膝関節』(大腿膝蓋関節:大腿骨と膝蓋骨の関節)や『肩関節』では、多くの症例で跛行がみられます。その他、『球節』でも発症がみられます。

診 断

 診断は、おもにレントゲン検査で行われます。OCDは両方の肢に発症することが多く、仮に症状が片側の肢だけにみられても、

先に、OCDは軟骨が骨になる際の異常だと説明しました。なので、実際には離断した病変の中に骨成分と軟骨成分が含まれています。時折、軟骨成分が多いこともあります。 

レントゲンは、骨を観察することはできますが軟骨の観察はできません。ですから、このようなケースでは、レントゲンでも診断が難しいこともあります。

 関節液の増量といった最も一般的なOCDの症状は、そのほかにも骨折や感染性関節炎などの大きな疾患でもみられます。

OCDの治療

レントゲン検査でOCDが認められた際、もっとも一般的で有効な治療方法は外科手術です。

手術は、関節鏡でおこなわれます。関節鏡手術は、関節に小さな穴をあけて、内視鏡カメラを挿入して観察しながら、小さな器具で関節内の病変を治療する方法です。

特殊なトレーニングが必要ですが、馬の手術施設においてはごく一般的であるため、ほとんどの馬の外科医は関節鏡手術ができます。

社台ホースクリニックでは 『飛節』の『OCD』だけで 年間100件以上 手術されています。

症状のみられない馬では、手術をしない選択肢もあります。

ですが、そのような場合OCDの病変がいつ関節内に落ちるかわかりません。関節内に病変が落ちると関節に強い炎症が起きることがあります(手術が必要になる)。

強い調教を始める2歳になって手術が必要となった場合、術後の休養期間などを考えるとデビュー時期にも影響する可能性があるため、1歳の春先までに手術することが多くなっています。

関節鏡手術の動画です

手術後の予後

OCDの手術後は、関節の炎症をとるために1週間程度の馬房内休養が推奨されます。その後は、曳き運動や小さなパドック放牧などから運動を開始し、問題がなければ術後6週~2カ月程度で広い放牧地での運動が可能となります。多くの飛節のOCDの馬たちはこのような経過をたどります。

 ただし、手術前に跛行していた馬、関節液が著しく増量していた馬などは、休養期間がさらに伸びる可能性もあります(おもに肩関節や膝関節など)。

 運動能力に与える影響はどうでしょう。

こちらも発症部位によりますが、多くのOCDの治療馬では、運動能力に影響はありません

かなり古い資料(2000年から2010年)ですが、

『飛節』のOCD 506頭の調査

出走率:83.8%、出走回数:1~106回(平均13.4回)、平均収得賞金:16,109,933円

※出走できなかった馬たちの原因は、OCDと関係ないものばかり

『膝関節』のOCD 61頭の調査

出走率:79.8%、出走回数:1~43回(平均11.8回)、平均収得賞金:8,813,382円

育成期にOCDの手術歴のあるG1勝ち馬は沢山います。

手術後の運動制限が、運動能力に全く影響を与えないかどうかわかりませんが、少なくとも『飛節』OCDが、手術後に関節の機能を低下させることはないと考えてよいでしょう。

次回は…

 今回は典型的なOCDのレントゲンをお見せしました。

 次回は少しイレギュラーなOCDを紹介します。 生産地の馬の獣医さん。ぜひみてね。

Mahalo