後躯の筋萎縮、跛行、捻髪音など、骨盤の異常を疑ったときに役立つエコー検査法について紹介します。
成馬では、その大きさのために骨盤のレントゲン検査が一般的に難しくなります。海外ではシンチグラフィー検査やCT検査(一部国内でも実施可能)が可能ですが、日本ではなかなかその機会はありません。
そこで、エコーをもちいて骨盤の評価をする方法が役に立ちます。難しく感じるかもしれませんが、ポイントを押さえれば、かなり診断の精度はあがります。ぜひトライしてみてください。
準備
1.成馬であれば、深部(15cm以上)まで描出できる コンベックスプローブ が適しています。
2.できるだけ 骨盤周囲、臀部の 毛刈り をします
不可能であれば、シャンプーで汚れや皮脂をしっかりと落とし、アルコールやゼリーをつかいます
Point!! 毛刈り後に、シャンプーなどでスクラブすると、さらに画像が綺麗になります。
3.後躯の検査は、時折危険です。鎮静処置 するのが良いでしょう。
4.骨盤の触れる部位は


赤 : 腸骨 寛結節
黄 : 大腿骨大転子
水色: 座骨結節
紫 : 大腿骨第三転子
これらの部位を触診で触って、骨盤のイメージをつくりましょう。
観察の手順
見逃しを防ぐために、いつも同じ手順 で検査することをお勧めします。
プローブの断面のイメージラインを骨標本上に 赤のビニールテープ で示しています。
①腸骨翼



- 骨のエッジを意識して 全体の形状を把握します
- なるべく細かく縦に何か所もプローブをスライドさせて、骨の表面ラインを確認します
- さいごに、横方向にもプローブをスライドさせて、再確認します
- 腸骨翼の尾側縁は、かなり垂直に近い形状です。イメージしてScanしてください。
②腸骨体




- 腸骨翼から尾側方向へ水平にプローブをスライドします
- 長軸で観察した後は、短軸に。プローブを90度回転(縦方向)させて、プローブを尾側へスライドさせながら観察します。
- 長軸で観察し、尾側にスライドするにつれて腸骨体が盛り上がってみえたら、そこからが股関節です
③股関節




- 寛骨臼・大腿骨頭・大転子の内側が描出されます。
- 腸骨体の長軸での観察で、プローブを尾側へスライドさせ、骨盤の位置まできたら(寛骨臼の盛り上がり)、プローブを反時計回りに30~45度回転させます(右股関節の場合)
- 大腿骨の大転子が邪魔になるので、わずかに上からのぞき込むように描出します
④寛骨臼の背側ライン~座骨




- 股関節の位置からさらに背側 へプローブをスライドします
- 殿筋の厚みもあり、プローブを同じ角度で背側へずらすと、一旦骨ラインが消失します。焦らずにプローブを立てましょう。
- 大腿骨の大転子があるため、外側からはこの部位が描出できません。
- プローブを垂直に近いくらい立てて、上から寛骨臼背側を覗き込むイメージで。
- 寛骨臼のこの部位は、やや盛り上がったラインとして描出されます。



- そのまま、尾側方向へ骨のラインを追いかけます
- そうすると、座骨・座骨結節まで描出ができます
⑤大腿骨第三転子



- この部位の骨折は後肢跛行の原因の一つとなり得ます。
- 大腿骨のラインを確認して、尾側から斜め方向へ向けて描出します。
さいごに
次回は、実際の骨盤骨折の症例について画像を紹介します。
- 綺麗な画像を出すためには、事前準備が一番大切です。手抜きせずにしっかり皮脂を取り除きましょう。
- 最初は骨標本があるとイメージがしやすいです。 骨標本のない方は… 要相談 です。
- 正常な画像のイメージをだす自信がないと、ちょっとした異常を 自分の技術のせい? と勘違いしがちです。 困ったときは、対側と比べるのがよいでしょう。
- 骨盤のCT も参考にしてみてください。