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関節炎 

 馬はヒトとちがって子宮の中で母馬から抗体をもらうことができません。ですから、生まれて概ね2時間以内に抗体がたくさん入った良質の初乳を飲むことで、一定の免疫力を備えることができるようになります。

それがうまくいかないと、移行免疫不全と呼ばれる状況となり、多くの感染症の危険にさらされてしまいます。

2015年の5月5日にリーフ乗馬クラブで生まれたイオくん。6月に右の後膝(あとひざ:大腿膝蓋関節)の感染性関節炎になってしまいました。感染性関節炎は、仔馬でよくみられる病気です。

関節の中に細菌感染が起きてしまうことで、激しい炎症が起きて、最悪の場合は肢を付けることができなくなってしまいます。典型的な症状は、発熱・関節液の増量・跛行です。

治療は 抗生剤の投与 ・ 関節の洗浄 を行うことが有効です。

やや古い調査(2010年)になりますが、関節炎を発症した106頭の馬の全体の治癒率は、79.2~84.9%でした。ですが、発症から24時間以内に関節洗浄手術を実施した馬の治癒率は91.7%まで上昇しました。

時間の経過とともに、治癒率が低下する傾向がみられます。

これが、 Orthopedic Emergency(整形外科的な緊急事態)と呼ばれる理由です。

抗生剤の投与のみで治癒する馬もいますが、当院では、可及的速やかな関節洗浄手術を行っています。

さて、イオくん。関節炎に加えて、骨の感染(骨髄炎:こつずいえん)も併発していました。通常は、骨髄炎の併発があると治癒率がさらに低下するとされています。(先ほどの調査では71.4%)

下の図は、あと膝のレントゲン写真です。 大腿骨の骨端に黒い影(赤矢印)があります。どんどん広がっているのがわかります

初診日
9日後
21日後

イオ君は、合計3回の関節洗浄手術を乗り越え、なんとか無事に乗馬になれました!! 

今では、手術した肢も問題なく、緑に囲まれた素晴らしい環境で元気にトレーニングしてもらているようでした。 よかったね!イオ君!!

さいごに

 感染性関節炎は、仔馬に多い病気ですが、まれに成馬にも発症します。

あなたの愛馬に 発熱 ・ 跛行 ・ 関節液の増量 がみられたら、すぐに獣医師に連絡しましょう。