体調管理をするうえで体重測定は大事ですよね。病院では、体重によって薬の投与量などが異なってくるため、馬用の体重計があります。
体重計がある牧場はなかなか無いと思いますが、北海道では、仔馬の体重増加が正常曲線内にあるか頻繁に測定するため、体重計のある牧場も少なくありません。
Weight Tapeもありますが、ほとんどは軽種馬用で、正確性も劣ります。
そんな問題を解決するのが、体に蓄積されている予備エネルギー(脂肪)の量を評価することで馬の栄養状態を把握する方法がボディコンデションスコア(BCS)です。
馬のボディコンデションスコアは、脂肪蓄積の状態を体の6か所で測定してスコアを付けます。スコアは1~9の段階があり、1は削痩(やせすぎ)、9は肥満(太りすぎ)を表しています。あなたが与えている餌のエネルギーが不足していれば痩せますし、過剰であれば太っていきます。
馬の栄養要求量は、運動量、年齢、環境ストレス、様々なものによって影響されます。それらを相対的に判断するために、蓄積された脂肪の量を評価することで、馬の健康状態を把握することができます。
一般的に多くの馬は スコア5 が適切ですが、繁殖牝馬はそれよりもややコンディションが上の 6程度 が受胎率向上や早期胚芽死率低下にとって良いとされています。7以上になると代謝性疾患(Equine Metabolic Syndrome)の発生の危険性が高まります。
測定個所は以下の6か所 順番は問題でないですが、チェックする流れが良いので私はいつもこの順番。
- 頸部
- き甲
- 腰
- 尾根
- 肋骨
- 肩のうしろ

① 頸~喉頭部 (くび~のど)
極端に痩せた馬の場合、くびの骨の構造をみることができて、喉のあたりの骨の構造までくぼみます。スコアが上がるにつれて、脂肪がそれぞれのくぼみに蓄積するのがわかります。5になると、スムーズに体躯に溶け込むようにみえます。6になると、頸の横にすこしずつ脂肪が蓄積し、7になると、脂肪の蓄積が目に見えるようになる。

② き甲
痩せていると、き甲の骨の構造はすぐに見てわかります。触ってもわかります。5であれば、き甲はちょうどよい程度に覆われる。6-8で脂肪がつきはじめ、8~9になると脂肪で膨らんでみえます

③ 腰
5であれば、スムーズで丸みを帯びて触る。4の場合、背中が少しとがってさわり、さらに低下すると、見てもわかるほど目立つようになります。5からスコアが上がるにつれて、背骨に沿って脂肪が蓄積されていくため、手でなぞったときに背中にシワができていくのがわかります。 クォーター では、BCSが低くてもシワができやすいですが、サラブレッドではあまりできません。

④ 尾根
3以下の痩せた馬では、尾頭が突出して、座骨結節がさわります。馬が太り始めると、尾頭の周りに脂肪が蓄積され、馬が太ると、その部分は柔らかくスポンジのようになり、膨らみ始めます。
7以上になると、真後ろから眺めた時に尾根部を中心にお尻が左右にわれはじめます。

⑤ 肋骨
横から見ます。ぱっとみて肋骨がういてみえたら、5未満。5であれば、見えるか見えないかor触れるだでですぐわかる程度。見えない場合は、手で触って皮膚の直下に肋骨を感じるかどうか触ります。7では、見てもわかりませんが、押さえて触ればまだ肋骨がわかります。それでもわからないのであれば太りすぎです。

⑥ 肩のうしろ
肩の後ろにも脂肪がつきます。あまり目立ちませんが、スコアが上がるほど脂肪がつきます。クライズデールは、背中や肋骨のBCSが低めでも、肩のうしろや、首の後ろ側に脂肪がつきやすい傾向があります。 サラブレッドでは、背中や肋骨に脂肪があっても肩の後ろにはあまりないこともあります。

さいごに
品種が違えば、脂肪が蓄積する場所をコントロールする遺伝子も異なります。同じ品種であっても、血統が違えば傾向に違いがあらわれます。
2~3週間に一度、自分の馬をしっかり触って記録してください。記録を付けて変化をとらえることがとても大事です。慣れればすぐにスコアを付けることができます。横軸が時間軸のグラフにBCSを記入して、手書きでイベントごと(大会、運動制限、病気、輸送、飼料変更など)などを書き足していくと、よい記録になります。
痩せてきた傾向があれば、カロリーを増やすために、給餌内容を変更するなどの対応を早めにとることができます。早めの対応が問題を大きくせずに済みます。
個体による差はありますが、BCSの増減は、可消化エネルギー摂取量を要求量の10~15%増減することで変化します。
例えば、2歳育成馬でスコアを1つ変化させたければ、1日の可消化エネルギー要求量(26Mcal)の10~15%である2.6~4.0Mcal を増減させる必要があるので、油を…. や 燕麦を…. と調整する目安ができます。えん麦であれば、概ね1Kg相当量でしょうか。
牧場のスタッフ全員で、評価基準を共有するのも良い方法です。
ぜひ、愛馬の体調管理に応用してみてください。