獣医療

腕節(わんせつ)の基本的な触り方

 ヒトでは手首にあたる関節の 腕節(わんせつ) 。前膝(まえひざ)や膝って呼ばれる方もいるかもしれませんね。どんな構造か知ってますか?関節液が増えたとき、どうやって触るか知ってますか?

腕節の構造

Essentials in Clinical Anatomy of the Equine Locomotor System

1:橈側手根伸筋 2:総指伸筋 3:外側指伸筋 4:尺側手根伸筋 5:尺骨茎状突起 

6a:橈骨体 6b:橈骨茎状突起 7:橈側手根屈筋 

8:尺側手根屈筋 9:橈側皮静脈  

10:夜目 11:副手根骨 12:外側側副靱帯 13:内側側副靱帯 14:手根管 15:第三中手骨 16:第四中手骨 17:第二中手骨 18:繋靱帯 19:深屈腱支持靱帯 20:深屈腱 21:浅屈腱

腕節の真横から撮影したレントゲン(橈骨の骨折あり)

外から見ると、1つの関節に見える腕節ですが、実は大きく3つの関節から構成されます。

矢印の上から順に

橈骨手根関節(橈骨と手根骨)

手根間関節(手根骨と手根骨)

手根中手関節(手根骨と中手骨) です。

蝶番のように大きく曲がるのが、橈骨手根関節 と 手根間関節 です。曲がらないのが手根中手関節ですが、衝撃吸収の役割をシェアしています。

腕節を構成する小さい骨(手根骨:しゅこんこつ)は 7 つです。

右腕節 正面から
右腕節 外側から

R : 橈側手根骨

I : 中間手根骨

U : 尺側手根骨

A : 副手根骨

2nd : 第二手根骨

3rd : 第三手根骨

4th : 第四手根骨

(Clinical Anatomy of the Horseより)

こちらの画像は、橈骨手根関節に造影剤(濃い白色)を入れてレントゲンを撮ったところです。

球節と同じで、後ろ側にもつながっています。この関節には、副手根骨も含まれます。

副手根骨は、橈骨と尺側手根骨との両方に関節面を持っていますが、これも橈骨手根関節に含まれます。

腕節の触り方(関節液の増量をみる触り方)

橈骨手根関節
手根間関節

2つの写真、指の高さが違うのがわかりますか?

手根中手関節は?と疑問に思われたあなた。素晴らしい。

実は、手根間関節と手根中手関節は骨の間で交通があるので、わかりやすい手根間関節を触ればいいのです。

腕節の骨折

 社台ホースクリニックでは、年間約400件以上の関節鏡手術が行われます。そのうち、25~35%は腕節内に対する手術です。ちょっと古い調査になりますが (2009年時の調査)

今はもっと成績良いです。。。

1番多いのは、右前肢の橈骨の外側の骨折になります。手術から競争復帰までの期間は、概ね6カ月程度が多いようです。

Equine Surgeon’s View : 最も多い橈骨遠位外側の骨折の関節鏡手術の映像です

さいごに

 怪我がないことが一番ですが、育成馬や競走馬の調教後のチェック、手入れの時によく触ってあげてください。異常を早めに見つけて対処することができるようになるかもしれません。

 乗馬でも、年齢を重ねると腕節の骨折や関節症などによって関節液が増量することがあります。引退競走馬を乗馬に転用する際、あるいは馬を購入する際(購入前検査)、日々の調教後のチェック、慣れればすぐにできるようになります。

 愛馬の異常を早めに見つけてあげられるように、是非練習してみてください。