北海道は出産シーズンを迎えて、ぞくぞくと元気な子馬が産まれています。
今年もすでに、難産介助・帝王切開・疝痛… と忙しい毎日が始まってしまいました…
馬の妊娠期間は11カ月(335日)とされていますが、個体差があります。
破水したのちに、仔馬が産まれてくるまで大きく3つの段階に分かれます。
馬の正常な分娩
分娩の準備段階です。母馬は神経質になり、頻繁に寝たり起きたり、排尿や発汗がみられ、軽い疝痛のようにも見えます。排尿や発汗がみられます。
破水(一時破水=尿膜絨毛膜の破裂)すると Stage 2 になります。 通常 2~3時間 続きます。

外子宮口は緩み、子宮の収縮が増します(陣痛)。
胎児の蹄と頭は骨盤に向かいます。最終的に羊膜に包まれた肢が、外陰部から突出してきてみえるようになります。このようにして見える肢(羊膜に包まれた肢)を「足胞(そくほう)」と言います。
多くの母馬は横になって、強くイキみます。
正常の多くの場合で 破水後20~30分 で娩出されます。
太くみえる臍帯は、臍動脈(静脈血)2本、臍静脈(動脈血)1本、尿膜管1本 からなります。
人が刺激しなければ、そのまま数分間横になりますが、その間に臍帯の血液が仔馬の体循環に入っていきます。
出生後5-10分で仔馬が動いた際に、仔馬の腹から5cmくらいの場所で自然に切れます。その間に、血液が仔馬の体内に戻っていきます。
胎盤が排出されます。胎盤はおおむね3時間以内に排出されます。
胎盤が3時間以上経過しても排出されない場合、エンドトキセミア(内毒素血症)、蹄葉炎、など重篤な合併症を引き起こす可能性が非常に高まりますので、処置が必要です。獣医師に相談してください。
馬の難産 とは
馬の難産の定義は、 以下のいずれかの状態です。
① 母馬・仔馬に障害の生じうる状態
②娩出に人為的な介助が必要な状態
③Step 1 と Step 2 に時間がかかりすぎる状態
その発生率はサラブレッドで高く、全体の4~13.7% とされています。
仔馬側の要因 : 過大胎児 ・ 胎位異常 ・ 奇形 ・ 双胎
正常な分娩では、両前肢がでてきて、頭が出てきます。

胎児の位置に異常があって難産となる場合、主に以下の異常がみられます。

母馬側の要因 : 早期胎盤剥離 ・ 骨盤形状の異常 ・ EHV-1感染症(流産胎児)
などが主な原因です。


難産が発生したら…
現場での介助分娩が困難と判断されると、その多くは全身麻酔が可能な病因へと搬送されます。
母馬は、全身麻酔された状態で仰向け & 後趾を吊り上げた状態 にされます。
これによって、陣痛のない状態で、 仔馬を子宮の奥に押す(母馬の頭方向)ことができます。
そうすることで、胎児の胎位異常を整復しやすくなります。
これができなかった場合、帝王切開となります。

ですが、いずれの方法で胎児が娩出されたとしても、子宮や産道の損傷が、後々の繁殖成績に影響を与える可能性が高くなります。
仔馬の生存率も気になりますよね。 次回はそんなお話。
Mahalo