年末に健康診断を受けた方も多いのではないでしょうか。『聴力検査』大丈夫でしたか?
人は年齢を重ねると、一般的には高い音から聞こえにくくなるそうです。

馬と耳にまつわる慣用句はありますが、馬の聴力はどうなっているのでしょうか。
馬の耳の解剖学

馬を知っている人なら誰でもよく知っているように、馬の耳はよく動きます。
それもそのはず、なんと10以上もの筋肉が耳介軟骨を支えています。
耳をよく動かすことは、ボディーランゲージのひとつでもあります。

聴覚
音の高さは『ヘルツ:Hz』であらわされます。この数字が小さいと低い音。
数字が大きいと高い音になります。

人が音として聞き取れる範囲は 20Hz ~ 20,000Hz です。
ピアノの一番低い音は 27Hz、 一番高い音は 4,186Hz 。
一方で、馬が聞き取れる範囲は 55Hz ~ 33,500Hzです。
特に 1,000 ~ 16,000 Hz の音に敏感です。
人よりも低い音は聞き取りにくいですが、人が聞き取れない高い音は聞き取ることができます。。
ただし、音の大きさ 『デシベル:dB』に関してはあまり変わらないようです。

人の最大は23,000Hzですが、一般的(標準値)には 17,000Hzくらいです。
犬笛 は16,000 ~ 22,000 Hz の範囲で調整して音を鳴らすことができるもので、人には聞こえない音を使って、犬のしつけ等に使います。
馬の難聴
人では、加齢に伴う難聴を 老齢性難聴 と呼びます。
日本では65歳以上の男性の44%、女性の28%に罹患がみられます。
馬も年を取ると耳が聞こえにくくなるのでしょうか?
Unpublicizedではありますが….
7歳未満の若い馬群と、20~31歳の馬群で 脳幹聴覚誘発反応(BAERS)を比較しましたが、両群の間に差はみられなかったそうです。
BAERS は 音刺激に対して発生する微細な神経活動電位を観察する方法で、難聴の診断に使われます。
馬の難聴の原因としては、側頭骨舌骨関節症(THO)、頭部外傷、耳の感染症などがあげられます。
先天性は、毛色と関係があるようで、スプラッシュド(写真はないのでWikipediaで検索してみてください)で発生がみられやすい傾向があります。
とはいえ、馬は聴覚以外の感覚が鋭く発達しているため、耳が聞こえづらいことによって普段の生活で大きな問題はそれほどないとされています。
生物が外界の情報を得るための感覚チャネルには、 聴覚・視覚・嗅覚・触覚・味覚 があげられます。
最も原始的な感覚が 原生動物にもみられる 『触覚』 です。
多くの動物(哺乳類)において外敵からの逃避や、獲物の捕獲、他の個体との意思疎通に主に役立っているのは聴覚・視覚・嗅覚です。
動物によって、これらの感覚の相対的重要性は異なります。
例えばコウモリ・モグラ・イルカのように視覚で外界の認知が難しい環境に生息する動物では、『聴覚』の重要性が高まります。
フクロウは、獲物の発する微細な音を頼りに位置を特定して狩りを行います。
一方で、同様に視覚が役に立ちにくい夜行性の蛾では『嗅覚』が発達しています。
オスの蛾は、メスのフェロモンを嗅ぎ取り、メスを追跡するそうです。
※ややこしいですが、昆虫の『嗅覚』を担うのは『触角(しょっかく)』と呼ばれるクシ状の突起構造です。
聴覚チェック
放牧するだけであれば聴覚に異常があっても大きな問題はありませんが、管理や調教には気を付ける必要があります。
馬にとっての死角から近づくとき、聴覚が正常な馬はその音で人が来ることを事前に察知しています。
耳の聞こえない馬は突然に人が現れるので驚いてしまうかもしれません。
また、調教中は声の合図に反応することができません。ぜっこ(舌鼓)にも反応しません。
地上でトレーニングする際は、手や見せ鞭などボディーランゲージを使って、騎乗中は慎重に(ゆっくりと)扶助を教えていく必要があります。
初期馴致中に違和感を覚えたら、聴覚をチェックしてみるもの良いかもしれません。
大学でBAERS検査せずとも、ご自身の馬の聴覚を簡易チェックをすることは難しくありません。
えん麦などの餌を入れた缶を、みえないようにして振って音を鳴らせばよいだけです。難聴の馬は、その音に全く反応しません。
ただし、耳が聞こえなくとも競技で活躍している馬もいます。
大きな音に驚いて暴れることがないことは、利点ともいえます。
おまけ
高校生の頃、当時の馬術の師匠からお借りして夢中で読んでいたシリーズ小説。
Mahalo,