獣医療

国内(遠隔地)の馬を 手術する試み    - Part 3 –

無事に手術が終わった 🐴ブラックライト🐴

どのようにして現場に復帰したのでしょう。治療は手術で終わりではないんです!!

術後検査

10月18日

6:00 

早い時間の飛行機で帰らなければならないため、朝6時に術後検査です。

お腹のバンテージ交換、 術創チェック 、 血液検査 

大腸の手術ではあまりない事ですが、小腸疾患の手術後は 一時的に小腸の運動能が低下してしますことがあります。そのような状態で水や草を摂取すると、また痛くなってしまいます。

全ての検査で異常がないことを確認し、水を飲ませ始めます。 

手術が終わった夜を大学ですごしたブラックライト君、今後の治療は 

A先生の牧場 イデア乗馬苑  に運んで行うことになりました。

術後治療

手術直後からの給餌はできませんが、あまりに長い絶食は正常な腸管運動の回復を促すのに妨げになります。

Preliminary results on the association with feeding and recovery length in equine colic patients after laparotomy.

J Anim Physiol Anim Nutr Mar 2019; 10.1111/jpn.13102

イタリアとポルトガルの2つの病院のデータを評価し、正常な腸機能を再獲得するための回復期間にどのような要因が影響するかを調べた回顧的研究があります。

この研究では 術後最初の給餌のタイミングの早さ(12時間以内)が、早期の回復と正の相関がありました。

6年間で37頭の症例が調査対象となっており、非常に興味深い研究です。結果に関して一定の同意はありますが、全ての結果をそのまま真似することもできません。

ブラックライトの場合、術前の期間が長かったこと、手術時にみた結腸の状態があまり良くなかったこと、術後の排便回数が少なめであったこと など考慮して、術後30時間程経過してから乾草のみ給餌を開始しました。

帰厩してすぐ。点滴して絶食中
 術後に初めて草をもらって 一心不乱に食べるBL君

最初に与えた草の量は、 チモシー 300g を 3時間おき 

その後徐々に1回量を増やし、数日後にようやく飽食になります。

術後合併症

 主疾患(この場合、結腸便秘)は、無事に解決しましたが、開腹手術には合併症の発生が少なくありません。

2015年 334頭の急性腹症に対する開腹手術の術後成績調査 (獣医麻酔外科学会) 

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これらは、起こりうることを考慮して様々な工夫をしてこの結果です。その後、7年経過しましたのでまた調査する必要がありますが….  

さて、ブラックライト🐴 。。。  

10月30日 もう抜糸も終わっていましたが 術創が腫れてしまいます

あまりグロイ画像は載せられないので、、、ある程度治療が効いた10月末の画像です。

術創感染は、手術時に切開した傷口に細菌感染が起きてしまう病態です。治療は、局所の洗浄や全身の抗菌剤投与が行われます。 毎日の局所洗浄は、馬にも、担当する獣医師にもかなりの負担です。 

A先生頑張ってくれました。

術後の運動

傷口の治り方によりますが、手術翌日から曳運動(1日2~3回)を開始します。

通常はおおむね術後3週間ほどは 舎飼い(馬房内)です。

その後は、小さいパドックなどで放牧を開始します。

ブラックライト🐴は術後7週間くらいから 調馬索 を開始しました。

術後2カ月ちょっとで騎乗運動を開始し…

今では

大会に出てきてくれたらみんな応援してあげてくださいね💐

次回は…  大阪府立大 石川先生より 今後の関西の馬診療施設に関する展望についてアナウンス

ご期待ください

Mahalo